11月27日に、加地亮選手のプロサッカー選手引退記者会見を実施いたしました。
その様子をぜひご覧ください。
加地選手:まず、今日お忙しい中、記者会見にお集まりいただき、ありがとうございます。
2017年をもって、プロサッカー選手を引退することになりました。(ファジアーノ岡山での)3年間は本当にいい経験をさせていただき、サッカー選手としても、一人の人間としても成長させてもらいました。自分を受け入れてくれたフロントスタッフ、強化部、監督、コーチ、選手に感謝したいと思います。それから、それぞれ所属していたクラブやいろんな関係者の方々にお世話になったので、すべての人に感謝したいと思います。ありがとうございました。
Q:引退を決断した理由は?
加地選手:素直に自分の思っているようなプレーができなくなってきたことも事実だし、来年もう1年頑張ろうという責任と覚悟をもって来年1年やれるのか自分に問いかけたら、自分を信じ切れなかったというか、責任と覚悟をもつことができなかったので、引き時かなと決断した。
Q:それはいつ頃で、きっかけは?
加地選手:夏場にケガをして2か月くらい休んでいた。それから復帰した4~5試合くらいでなかなか自分の頭で思うようなプレーができず、感覚の部分で違うところがあった。その辺からおかしいと思った。今までだとフィットしてくるものが、頭の中で思っているものと体が一致しない、感覚が戻らなくなっていると感じ、そういうことが自分の中では一番大きかった。
Q:20年を振り返って
加地選手:最初に(プロ生活を)始めたときは10年で区切りをつけていて、何とか30歳まで頑張ってやれればいいと思っていた。1年1年が勝負で、必死に走ってきたそういう20年だった。
Q:思い出に残っていることは?
加地選手:全部。どれというのが無い。どれも印象に残っているし、昨年のプレーオフもそうだし、今年の悔しい思いも残っている。これというのは出てこない。
Q:ファジアーノで過ごした3年間は?
加地選手:人間的に成長させてもらった。このクラブは誠実なクラブだし、全員が目標であるJ1、フロントで言えば平均入場者数1万人達成ということを信じて戦っているクラブだった。そこは自分自身としても、人間として学ぶものが多かった。
Q:引退を決めた今、加地選手にとってサッカーとは?
加地選手:サッカーとは…。考えたことがない。もう小学生からずっとしていることなので、よく言う生活の一部とか。当たり前で、生きてくる中で絶対に必要なものだったのかなと思う。
Q:引退後は?
加地選手:かっこよく言うと、青年実業家かな…。濁しておきます(笑)
Q:ファジアーノの3年間で一番印象に残っていることは?
加地選手:無人島でのウインターキャンプ(笑)。
Q:そこのキャンプで選手として得たものは?
加地選手:得たものというよりは少し後悔があって…。全然話は違うが人生で初めての無人島経験で、初めて体験する外で用を足すという…。それができなかった(笑)。一回味わってみたかったなという後悔(笑)。
Q:サポーターにメッセージを。
加地選手:感謝しかない。いつも温かく声援くださるし、スタジアムに行けば毎試合1万人近い方が集まって応援してくれて、力になるというか背中を押してくれる感じだった。ホームの試合はいつも以上のパワーが出る雰囲気にさせてもらえるので、ありがたい存在だし、これからも岡山を盛り上げていってほしいと思う。ありがとうございました。
Q:引退を周りの方に伝えたのはいつ頃?
加地選手:妻に最初に伝えた。タイミングは…風呂上りかな(笑)。さっぱりした後に…。反応は「好きにして」という感じだった。ずっと悩んで、相談したような感じだった。もう1年やるかどうか、いろいろ葛藤していたので。
Q:最終的に決断したタイミングは?
加地選手:自分の中で来年のことを考えて、今までのサッカー人生は毎年「もっとできる、もっとできる」と信じてやってきたが、自分を信じ切れなくなったというか、自分を信じていないのかなと。もう1年、自分の思い描いていたプレーとか、すべてをサッカーに注ぎ込めるのかということを信じ切れなかったのが、最後の決断になった。
Q:引退後の生活のイメージは?
加地選手:とりあえず妻が仕事をしているので、その仕事(飲食関係)を手伝おうと思っている。岡山とも何かしら力になれれば協力するし、話をいただければどういう形であれやりたい。
Q:家族に対して思うことは?
加地選手:20年間、僕中心の生活をずっと子どもも妻もしてきていて、僕についてくることが家族もしんどかったと思う。これからは、家族のために協力して、一緒に人生歩んでいこうと思う。
Q:長澤監督の存在は?
加地選手:FC東京時代はなかなか試合に出られないときに苦しみをわかってくれるというか、自分の立場に立って考えてくれる存在だったので、心の拠り所でもあるし、監督がいると安心するというか、ほっとする存在。
岡山で再会して、僕も年齢を重ねて若い時とは考えも違うので、見る目線が監督寄りになっているというか、長澤監督はどういう風に考えているんだろうなと。選手のことをすごく考えているなと感じながら、苦しんでいる表情もそうだし、常に何かを考えながら過ごしているんだと実感した。大変な職業で孤独だなと思う。
Q:今後はサッカーを全く離れる?
加地選手:全くかどうかはわからないが、サッカースクールを開くとか、コーチになるということは、今のところ考えていない。これから就く飲食の仕事は、今までと全然違う職種。でも、どの仕事も大変だと思うし、苦労の連続だと思うがやりがいはあるし、職業的にサッカーも人に夢を与えるもので、そういう観点からいうと、飲食の仕事も喜びを与えておいしいものを食べてもらって笑顔になってもらえるようなところは似ていると思うので、そこを目指してやっていきたい。
Q:どういう立場で飲食の仕事はする?
加地選手:宣伝になっちゃうんですが…(笑)。CAZI CAFEというお店で、料理を作る以外で、妻のサポート役を一緒にやっていきたい。
Q:多くのサッカーをやっている子どもたちへメッセージを。
加地選手:楽しんでやってほしいことが第一。あとは自分で決めたことや考えて行動することに対して、自分を信じてほしい。自分を信じることは難しいことで、自分を信じて自分の能力を信じて、自分がやっている行動、言動を信じることで現実になっていくので、全力で信じ切ってほしい。
僕は「もっとできる」ということを常に考えながらやってきた。それが今までの20年につながった。
Q:岡山に加入した会見の際に「充実したサッカー人生を送りたい」と話していたが、この3年間はどうだった?
加地選手:充実しっぱなしだった。やり尽くしたから引退ができるので、やり残したことがあれば悔いが残っているはず。まったく悔いのない20年間だったので、幸せ者だと思う。
Q:サッカー選手をやめる実感は?
加地選手:グラウンドに来ているし、練習もしているので、まだない。
Q:引退を表明した今の気持ちは?
加地選手:すっきりしている。伝えられないときはもやもやしているというか、言えて晴れ晴れしい。
Q:500試合出場まであと1試合だった。
加地選手:それも自分らしいなと。試合の数でサッカーをやっているわけではないので、そこに興味もないし、499試合という刻んできた数字には「これだけやってきたのか」と思うが、500試合であろうが、499試合であろうが自分の中ではよくやったなと思う。
Q:ファジアーノに何を残せた?
加地選手:自分としては、申し訳ないが何も残せていない。選手個人個人が何を感じていてくれているかということで、それは僕にはよくわからないし、力不足というか、もっと伝えるべきことはあったと感じる。
Q:岡山の街は?
加地選手:最高だった。
Q:今後もJ1昇格を目指すチームメイトに伝えたいことは?
加地選手:自分たちが進んできている道は間違ったものではないし、あとは自分の意思をどれだけ強く持ってピッチで表現できるか。もっと自分を出してほしい。
Q:プロ生活20年間の張り合いにしてきたものは?
加地選手:同じ年齢でガンバ時代に一緒にやっていたのは、遠藤、播戸、橋本で、彼らは群を抜いて僕よりうまかったし、逆にあこがれていたというか、こういう技術、こういう選手になりたいと、同世代だけど技術を盗みたいと勉強させてもらった。刺激にもなって、成長にもつながってありがたかった。
Q:長いキャリアを築けた要因は?
加地選手:長い選手はサッカーをよく知っているし、自分たちをどうピッチで表現するかを知っている。みんな常に考えているし、どうやって自分のプレーをフィットさせて、どういう選手が周りにいてどういうプレーをするのか、常に考えている。そういう選手が長くやっているし、サッカーに対して考えている。
Q:プレーするうえで大切にしてきたことは?
加地選手:常に気持ちがフレッシュな状態でいること。またこの練習か…ではなく、フレッシュな気持ちで臨める心の準備をしながら、どの練習も全力で手を抜かずにやってきたことが自分のスタイル。
Q:今後の日本サッカーに期待することは?
加地選手:僕が言うのもおこがましいが、僕自身はどこかのスタイルではなく、世界がこういう主流だからとか、速いサッカーとか流行に乗るのではなく、日本のスタイルを築いて、日本らしいサッカーをしてほしい。それがどういうサッカーかはわからないが、他の国などに流されず、日本と言えばこれというものを築いてほしい。何かスタイルを一つ構えてほしい。勤勉さも俊敏さもあるので、そういう特徴を生かしたものを作り上げていってほしい。
Q:これまでの経験からファジアーノへのアドバイスは?
加地選手:いろいろなチームで監督が出すコンセプトがあるが、いつでもピッチで表現するのは選手たち。その状況で選手たちが自分の意志でやれるかどうかがポイントになる。コンセプトを打ち破らなくてはいけない状況もあるかもしれないし、その判断を自分の責任と意志でやってほしい。それが重要になる。自分で実行することに責任をもってやらないといけない。
Q:現役選手に対する未練は?
加地選手:まったく無い。1か月、2か月プレーしろと言われればやれるが、1年という単位では…。サッカー選手は試合だけではなくて、試合以外ですごく努力がいるし、気も使う。すべてがサッカーのための生活になる。それを1年間やることは難しいと思った。
Q:サッカーに全て注ぎ込むことからの解放感は?
加地選手:変な感じ。悲しいとも違う。幸せな終わり方ができたと思うが、この生活がなくなってしまうことは違和感がある。
Q:今後、何かやってみたいことは?
加地選手:あまりないが、友達と泊りでゴルフを散々するとか。あとは冬なのでスキーとか。今まではケガが怖くてやらなかったが、子どもも喜ぶので。
Q:改めてサッカーの楽しさとは?
加地選手:プロサッカー人生20年で半分以上は楽しくなかった。サッカーは仕事の一環で、家族を食べさせないといけない使命感。楽しさを感じていたのは、本当に数年。勝つ喜びもあるし、相手との駆け引きは楽しかった。相手の心理を読みながら裏をかいていくことが面白い。岡山での3年間も楽しかったが、いろいろ伝えたいという思いのほうが強かった。自分の経験を伝えたいと思っていた。
Q:右サイドバックについて
加地選手:すごく大変なポジション。プレーした年数はたぶん、さほどないが、このポジションをやっていて疲れたなと。4バックとはまた違う、一人でサイドをやっている感覚。
Q:サッカー選手をやってきて一番良かったことは?
加地選手:多くの人とつながったこと。普通に仕事をしていたら、つながらないような人ともつながるし、貴重な経験をさせてもらえる。自分にとってプラスになるし、そういう方々からいろんな話や人生観を聞けるし、いい経験ができたと思う。